国土交通省では平成24年から建設業の社会保険未加入業者に対する対策を始めており、取り組みから5年後の平成29年には社会保険加入率100%となるよう加入指導などが強化されています。
これまで、経営事項審査の厳格化として保険関係の審査項目が雇用保険・健康保険及び厚生年金保険の2項目各30点が未加入の場合は減点されていましたが、改正後は雇用保険・健康保険・厚生年金保険の3項目に区分され各40点が未加入の場合減点されることになっており合計120点と大きく影響する評価となっています。
他にも営業所への立入検査と工事現場への立入検査が実施されています。営業所の場合、労働者名簿・賃金台帳・保険関係書類を確認し、企業・労働者単位で保険の加入状況を確認します。
未加入の場合は文書での指導を行い、加入手続きの報告を求められ、一定期間を超えても手続きを行わない場合は社会保険担当部局へ通報されます。
工事現場の場合、建設業法違反の検査に併せて保険加入の調査も実施され、下請業者への保険加入指導ができていない元請業者には注意喚起等が行われます。
また、建設業の許可更新時に加入状況の確認が行われます。許可更新は5年毎に行われますが、前回の更新や新規申請の際に必要なかった社会保険加入状況の様式が追加されており、保険加入が証明できる書類を提示して申請します。この時も、未加入であれば4ヶ月以内に加入して頂くよう文書での指導が行われます。
指導後も未加入である場合は、社会保険担当部局へ通報されます。
※社会保険担当部局へ通報されると、年金事務所からの加入指導や立入検査が行われ、それでも加入しない場合は建設業法に基づき指示処分や営業停止処分等が行われます。
平成26年8月より社会保険未加入対策はさらに強化され、社会保険未加入業者に対してはペナルティーが課せられます。
国土交通省が発注する直轄工事の元請業者と下請金額が3000万円以上の一次下請業者については社会保険の加入業者に限定されます。(建築一式工事の場合は4500万円)
元請業者は経営事項審査の際に加入状況を確認され、未加入の場合は入札に参加でできません。また、元請業者は社会保険未加入の業者と下請契約を締結することは原則として禁止されます。
1次下請業者の加入状況確認は元請が作成する施工体制台帳で確認され、未加入だった場合は、元請けに対する制裁金に加え2週間から4ヶ月の指名停止の実施と、工事成績評価の減点が行われます。
工事に携わる2次以下の下請の場合は元請けに対してのペナルティーはありませんが、建設業担当部局による個別指導が行われます。
※社会保険の適用除外事業所と特別な事情が認められる場合はペナルティーを課せられない場合があります。
社会保険が適用除外になる業者とは?
個人事業主または一人親方のように社会保険等の加入義務がない事業所が対象となります。
特別な事情が認められる理由とは?
特殊技術等を必要とする工事で特定の未加入業者と下請契約を締結しなければ目的を達成することが困難になると判断される場合は30日以内に保険加入するよう指導することで契約することができます。
未加入の状態が続けば元請業者にペナルティーが課せられます。
次の場合は特別の事情とみなされません
- 長年の付き合いで他の業者と契約したことがない
- 発注者と契約する前に予め下請契約を締結していた場合
- 他の下請業者を探す時間がなかった
- 前回同じ工事を施工した下請け業者と契約した場合
元請業者に課せられるペナルティーとは?
- 制裁金
元請と社会保険未加入の1次下請との最終契約金の10%(下請との契約金が4000万円だった場合400万円が制裁金となります) - 指名停止
重大な契約違反とされ2週間~4ヶ月の指名停止 - 指名停止に伴い工事成績評点の減点
平成27年度以降は競争参加資格者名簿に登録できる企業を社会保険加入業者に限定されます。