自営業者・個人事業主のうち専門的な技術を持ち熟練を要する仕事でその能力を駆使した労働を伴う技能職人です。
肉体労働を伴う職人を指しますので、個人で設計事務所を経営しており、業務委託契約で仕事をしている場合は一人親方とは呼びません。
労働者として弟子入りし、修業を積み重ね技術を習得したあと、職人となり、営業能力が備わって一人前の職人となった時に一人親方として独立します。
一人親方は労働者ではないので、労働基準法や労災保険等は適用されませんが(労災保険は労働者でない事業主、経営者、役員は適用外)、本人の申し込みにより加入条件を満たせば、労災保険の特別加することによって、労災保険の適用を受けることができます。
一人親方をめぐる問題
一人親方は労働者ではないので、通常他人から指揮命令を受けませんが、経験の浅い一部では請負契約を締結したにもかかわらず、労働者と変わらない状態で働いている場合もあります。
そうなると、労災特別加入をしていても、実態が雇用関係にある場合は労働者性が認められ、社会保険の加入が必要となります。
このように、熟練している職人でも現場によって雇用契約・請負契約がはっきりしないことによる、労災適用・偽装請負・所得税未納・社会保険未加入といった問題が発生します。
一人親方が請負人として認められるためには、自分の道具を使用し、自分の責任と判断の元で労働者を指揮し、法律上の責任を負って仕事を完成させなければなりません。
個人事業主と社員(労働者)の違い
個人事業主(一人親方)と従業員との区別をするのは難しい場合もあり、個人事業主と思ってしていたことも応援やアルバイト扱いだったりすることもあります。
その違いで保険料や年金額も変ってきますので、どの立場で働いているのか違いを把握しておく必要があります。
個人事業主としてのチェック項目
- 仕事先から意に沿わない仕事を依頼されても断る自由がある。
- 日々の仕事量や配分は自分の裁量で判断できる。
- 仕事の就業時間を自分で決められる。
- 頼まれた仕事を自分の判断で代わりの者にさせることができる。
- 工事代金は日割りの単価ではなく出来高に見合った代金を請求できる。
以上の項目に当てはまれば、個人事業主としての請負工事をしていることになり、建設業許可取得の際に工事実績として使用することができます。
逆に全て当てはまらない場合は従業員扱いとなるので、請負工事としての実績は認められませんが、保険の面で言えば厚生年金に加入できる場合があります。
どちらがいいかの判断はどうしたいかの本人次第です。
一人親方の場合、今回は個人事業主として現場に入り、あるときは技術者として応援業務に入ったりと完全に分けることができないこともあるかと思いますが、許可要件で考えるならば個人事業主としての請求書や契約書があればその期間は経営者として認められると言うことです。
個人事業主でも建退共の加入ができます。
建退共とは建設業の退職金制度のことで、加入要件を満たせば個人事業主も加入ができるようになっています。
働いた日数分の掛金で積立てることができ、将来引退する頃にはまとまった退職金を手にすることができます。
また、経審を受審する際は建退共の加入は加点の対象ともなりますので、個人事業主以外の方でも加入はお勧めします。
一人親方に対する税務調査
国税庁は一人親方等の個人事業主を対象に税務調査を実施しています。
所得税法上、請負契約であれば事業所得、雇用契約によるものであれば給与所得となります。その所得区分の判断基準も見直され、より就労形態に重点を置いた調査となりました。
調査することで労働制が強く、雇用契約であると認められた場合は雇用主に対し過去5年分の源泉徴収が命じられる可能性があります。所得増加分に対しては納税しなければなりません。
一人親方等に対する税務調査は今後、ますます徹底される予定であり、保険や経費等の問題で安易に一人親方に移行する考えも慎重に行わなければなりません。