建設業界では元請業者は下請業者より優位だというイメージがありますが、イメージだけではなく実際になりがちなことが多いです。
下請や孫請けの業者は少しでも利益を出すためにと、建設業許可を取得し、経営事項審査を受審して元請業者になりたいと聞きますが、本来は「元請だから儲かる」ではなく、公平性を保つためにも元請としての責任が義務づけられています。
激しい競争による元請・下請間における法令違反が問題となっているため、元請業者としての義務を確認した上で工事契約をしましょう。
1.見積もり条件を提示
工事に関する具体的な内容を下請業者に提示し、下請業者が見積もりをするための時間を設ける必要があります。
元請が不当に低い金額を提示し、原価を割るような契約を強要してはいけません。
2.書面による契約
当初契約、追加工事、工期の変更等、必ず工事着工前に書面で契約書を交わさなければなりません。(電子契約可)
注文書、請書も契約書面と同じ要件を満たす必要があります。
3.指値発注時の留意点
元請が契約金額を指定し下請に発注する際は、根拠を明らかにし、下請業者との協議を行う必要があります。
4.使用材料等の購入強制の禁止
下請契約後に元請業者が材料や機械等の購入先を指定して下請の利益を害することを禁止しています。
指定を行う場合は見積もりに提示し、契約時に伝えておく必要があります。
5.一方的なやり直し工事の禁止
下請業者に非がないやり直し工事は契約変更を行い、費用負担は元請業者が負うことになります。
6.工期変更時の留意点
やむを得ず工期変更になる際は変更契約を交わし、増額分を下請業者に一方的に負担させてはいけません。
下請業者に非が無い場合は元請業者が費用負担することになります。
7.赤伝処理の留意点
下請業者への支払いの際に、工事施工に伴う諸費用(廃棄物の処理費用等)を支払代金から相殺することはできません。
下請業者の負担とならないよう、内容を見積条件、契約書に明示する必要があります。
特定建設業の元請は上記に加えて以下の義務が定められています。
1.支払い保留の禁止
元請業者が発注者から出来高分や完成後の支払いを受けた場合は1ヶ月以内に下請業者に支払う義務があります。
発注者からの支払いが無い場合でも下請から完工の連絡を受けた場合は50日以内にできるだけ早く支払わなければなりません。
2.長期手形の交付禁止
下請業者が資本金4000万円未満の一般建設業者である場合、代金の支払時に金融機関による割引を受けることが困難な手形を交付してはいけません。
3.備付帳簿の保存
営業所ごとに帳簿を備え5年間保存しなければなりません。